畳職人としての私の創作の根底には、何が畳職人の真髄であり、
特に畳職人徳田直弘の存在意義と役割は何かという問いへの深い探求があります。
大事なのは「畳を残すこと」です。
どう次世代に繋げるか、どうやって残すのかが問われている気がします。
畳は奈良時代から受け継がれています。
現代まで残っていることは継承してきた先人たちの賜物ではないかと思います。
しかし、
日本でもっともポピュラーな床材である「畳」は生活空間に馴染み、
当たり前に存在していることで
誰も見向きもしないものになっている現状があります。
私は「畳を製作する=畳1.0」と捉え、『畳の新しい文化=畳2.0』と提唱しています。
『製作をするだけでは無く、畳の新しい文化を築くこと(アップデート)』が
現代の畳職人として必要です。
一見、奇をてらったような行動に感じるかもしれませんが
新たな畳の価値を見出すためには『会話』という現象が必要不可欠です。
畳に関する体験や思い出、感覚までも共有できれば畳は後世に残ります。
表現方法は単に畳の形状や材質だけではありません。
畳というワード、原料のイ草が持つ生命力や力強さや、
イ草が育つ環境、畳が製作されるときの音までも伝えていきます。
さらには作品を通じて、お一人でも多くの方々が
独特の香りや手触りなどを新たな視点で想起させ感じ取ることができれば、
日常において感じる安らぎや集中を取り戻せるのではないかと考えています。